７月はじめの暑い日、サレーヴ山にケーブルカーで登りました。その日はとてもいい天気でした。

サレーヴ山ではロッククライミング、マウンテンバイク、パラグライダーなどを楽しむこともできるし、キャンプやハイキングも楽しめます。実際、サレーブ山を訪れた日にも、パラグライダーを楽しむ人たちがたくさんいて、山の上や周りにいろんな色のパラシュートの花が咲いていました。また、山頂近くには、木陰でハンモックやリクライニングチェアなどでくつろぐ人、お弁当を持ってきている人たちがいたり、バーベキューをしたらしい跡もあちこちにありました。

サレーヴ山に登るには、車でも行けますが、ケーブルカーを使って登ることもできます。ケーブルカーはジュネーヴ南端にあるヴェリエ(Veyrier)から国境を越えフランスに入ったところの町にあり、シーズン中は15分おきに約４分の所要時間で運行されています。私たちは車でケーブルカー乗り場まで行き、家族割引の往復チケットを購入し、山に登りました。支払いはスイスフランでもフランスフランでも使えるようでした。ケーブルは見上げるとほとんどまっすぐ上に向かっているように見え、ケーブルカーが山に登るにつれ、そのまま岩肌にぶつかるのではないかと思われるほど迫力がありました。実際には30〜40度くらいの傾斜なのですが。

それほどの傾斜ですから、ケーブルカーが登り始めた途端、あっという間に家々は小人の家になり、豆粒になり、レマン湖の名物噴水が見え始めます。そしてレマン湖に浮かぶヨットや船の影が白い点になった頃、カントン・ジュネーヴをまるごと見渡せる程に登っていることに気がつきます。湖岸を辿るとニヨン(Nyon)あたりで霞んでいるように見えました。もっと空気が澄んでいれば、中央アルプス方面も見ることができるのでしょう。 さて、ケーブルカーを降りて駅の裏に出ると、幼児用の木馬のようなものから、滑り台、タイヤを利用した遊具など高学年の子どもまで遊べる児童公園があります。小学校低学年の我が子どもたちはここで１時間近く遊んでくれました。山の傾斜を利用した滑り台は、上から見るとジュネーヴに向かって滑っていくような錯覚を起こすほど絶景のところです。

公園の木陰の草の上に腰を下ろし、ふと脇を見ると色とりどりの花。ジュネーヴの観光案内のパンフレットにあるサレーヴ山のところには、ここは自然の宝庫でシーズンに登ればたくさんの花に出会えるとも書いてあります。( You will discover a landscape with vast pastures, immense green carpets on which, depending on the season, cowslips, carnations, bellflowers, gentians, and buttercups stipple spots of color.) めずらしい花がたくさん咲いているのでカメラに収めながら、花の種類を数えてみました。なんと、40種類以上の花がそこここに咲いていました。花だけでなく、サレーヴ山にはめずらしい木や植物がたくさんあるようです。

くねくね曲がった車道を横切るように登山道があり、それほど急な道でもないので子どもたちと一緒に登ってみました。途中林の薄暗い中を歩いていると、空気がひんやりしているような気がします。足下にはあまり日光を必要としない草や花が静かに座っています。林から抜けると山頂には草原が広がっていました。サレーヴ山をはさんでジュネーヴと反対側には白い山脈が座っていて、ヨーロッパ一の高峰モンブラン(Mont Blanc)がその中央にいました。（ただ、この写真ではモンブランはじめ白い山ははっきりと写っていません。(;_;)）

山の上なら風があって楽しめるだろうと、スポーツカイトを持っていったのですが、あまり風がない日で、木陰にいるとそよそよととても気持ちのいい風が頬をなでるのですが、カイトにとっては優しすぎるようで、しばらく挑戦した揚げ句、あきらめることにしました。ケーブルカーの駅のそばにパラグライダーの出発地があるので、そこに降りてからまた試すことにして、駅まで下山しました。

駅にはレストラン・カフェがあります。そこで昼食をとることにしました。レストランからレマン湖方面が一望できるため、客はまず屋外の展望のいい席、次に室内の窓際、それから中央の席と案内されるようで、私たちは外の展望のいい席が満席のため、室内の窓際に案内されました。窓の外はすぐ崖で、ケーブルカーの発着所のすぐ脇なので、ジュネーヴの景色の端っこにケーブルカーも時々見ることができます。とても優雅な気分になれる場所です。

さて、食事です。一応観光地だし、山の上なので、値段の割にはあまり期待してなかった食事でしたが、これが意外と美味しい。主人はステーキと付け合わせ、子どもたちにはラム肉とリンゴのソテー、私はポトフを注文しましたが、どれも意外な美味しさにうっとりしてしまいました。また、サービスも至れり尽くせり。子どもたちはたくさん食べないだろうと、合計大人３人前を注文したのに、サラダを４人前持ってきてくれるし、取り皿がいるだろうと新しいお皿を１枚、それから子どもたちにポテトのサービス。ワインはローヌのロゼのハーフボトル。これもちゃんとワインポット入りで飲み頃。ワインポットはフランスではあたりまえ？

食後の腹ごなしにパラグライダーの出発地でスポーツカイトを、と思ったのですが、やっぱり風がありません。日向にいるとじりじりと肌が焼けるのがわかるくらい日差しのきつい暑い午後、風がよどんでいるため余計に暑いのかもしれません。売店でアイスクリームを買って食べて、ケーブルカーで下山しました。登りと反対に、レマン湖がだんだんつぶれて噴水が見えなくなり、豆粒の家がおもちゃの家になり、ミニカーが本物の車に戻るのと同時に地上の駅につきました。

帰りに、レマン湖畔の噴水のそばの芝生の上で、最後のトライ、スポーツカイトをあげてみました。斜めになる太陽の光を浴びて輝く噴水を背に受けて、ほんの数秒ですがカイトは空を舞いました。蒸せるような暑さのその日のジュネーヴの気温は30度近かったとか越えてたとか。